工場・倉庫の熱中症対策-5種類の比較検討事例

地球温暖化が叫ばれる中この数年の酷暑は死者が出るほどのスケールとなってしまっています。 多くの倉庫や工場の屋根に使用されている折半屋根ですが夏季の直射日光において60℃以上まで表面温度が上がってしまい輻射熱として屋内の天井面から最上階の床に向かい遠赤外線を伴って降り注ぐことになります。  遠赤外線は芯まで届いて温かくする性質があるために湿度や体調などとリンクすると容易に熱中症を招く労働環境を作り出す危険性が高いことを意味します。 工場長をはじめとして経営層も熱中症対策は無視できる問題ではありません。 劣悪な環境により離職率があがり人材確保ができずに事業継続が困難というデメリットが容易に想定できるのが現状だからです。   

2019年は2018年より増加してると推測します

改善には設備投資として多額のコストがかかりますが、多くの対策がある中でなにがベストなのかは多面的な要因から検証をしなくてはならなくて文字通りケースバイケースです。 メーカーに聞いても自社製品を推すのは当然なので公平性にかくために本ブログを参考にしていただけましたら幸いです。


「それでは最適な対策について考察したいと思います。」

ケースデータとして弊社が請け負った下記のケースを題材にいたします。

<建物データ>
所在地:神奈川県 

建築物概要:2階建倉庫
      屋根高10m 
      屋根面積530㎡
      折半屋根
      1F工場(金属加工業)
      2F倉庫&事務所
背景概要 :賃貸物件
      隣接地に他社の倉庫あり
      従業員駐車場が隣接
      周囲に一般住宅
相談内容 :2階倉庫を業務拡張に伴って倉庫に改造を希望
      夏季には40℃を超える悪列環境の改善 

施設の形状・立地・業種・築年数・用途等の条件によって対策は数多くあるためにこのブログでは5つの手法について解説します。 条件に応じて最適な手法を行い事業継続性を高めていただければ幸いです。

5つの手法の解説

「折半屋根に断熱の提案を・・」との依頼でしたが飛散防止ネットや足場のコスト、作業人件費等からトータルで見た場合には天井面に断熱シートを設置するのが一番効率が良いと考えました。
これは本案件についてのケースなので個々の手法についてメリットデメリットを解説します。

第1位 キープサーモウォール 遮熱材設置(天井部分)

折半屋根への対策のご依頼だったために屋根への対策を探していましたが足場代が施工のために100万円近くかかってしまうことが壁となりました。  塗装に関しては近隣住宅などへの配慮を考えると飛散防止ネットが必須となり作業日数も増えてしまいます。 そして梅雨前に決断して発注するには連休前には確定しなければならず、3月中旬に依頼を受けて1ヵ月弱ですべてを決めなければならないというスピード感の伴うものでした。 その点、屋内の作業ならば少しだけ熟慮の時間が得られることと足場が不要であり効果も確約できる内容であり、施工に向いた環境下であったことにより僅差でしたが採用となりました。

http://www.eyebec.co.jp/news/detail/41

天井部分に配管があったりするケースだと作業が大変になり不向きになりますが該当案件のケースにおいてはとても短期間で施工が可能なマッチする案件だったことが採用に寄与しました。

第2位 冷えルーフ 遮光シート設置(屋根)

直射日光を遮ることと通気をよくして風で冷やす相乗効果により夏の日射から守るとともに冬は結露を防ぐという内容です。  短工期で設置が可能であること、施工例がとても多くていろいろな手法との比較を行っていて比較実証実験データを開示しており、とても理にかなった製品だと感銘を受けました。 屋根に施工するというアプローチでは最上位の施策となりました。

http://www.308-al.co.jp/environment/about/

メーカーによると大丈夫とのことですが強風により破損や飛散してしまうのでは?という疑念が残るのが台風19号での悲惨な事故を目の当たりにした2019年が記憶に新しい施主様の懸念が天井への施工を優先させる結果となりました。   天井が配管などの理由で施工困難で作業日数が増してコストUPになるケースであったらこちらの採用になっていたと思います。 台風などの被害により破損した場合でも5年間保証があるということ、賃貸契約終了時には取り外して移設や二次利用が可能というのはキープサーモウォールとともに優れたメリットだと考えました。

第3位 サーモバリア 遮熱材設置(屋根)

本案件は2018年の熱中症対策展で出展していた有効策を発信したブログに対しての訪問者からの案件でしたが、当初はサーモバリアへのお見積り依頼でした。  他の内容も比較対象として提案して施主様にとっての最適策をともに検討したいと考えたために今回のベスト5の発信となりました。 よい製品ではありますが、屋根部分を高圧洗浄するためや傾斜している形状を考えると全面に足場を組む必要がありコストUPにつながることがデメリットになりました。 

https://www.e-lifetech.com/

第4位 遮熱・断熱塗装 SLコート(屋根)

とてもポピュラーな手法です。 宇宙ロケットが大気圏外に出る際に突端に積載している精密機器が高温で機能不全にならぬように塗っている塗料と同様のメカニズムで断熱することで直射日光によって温まった屋根の熱を建物内部に輻射熱として招き入れることを防ぎます。 断熱だけであると熱を内部に蓄熱してしまいそれが輻射熱となってしまうために本製品は双方の特性を持った塗料となります。 残念ながら、初期段階での高圧洗浄作業の際と三度塗りする塗料の飛散防止のために昇降足場とともに飛散防止ネットの設置が必須となるのが、近隣に住宅地や他社の倉庫、従業員駐車場で囲まれている今回のケースにはアンマッチでした。

https://www.painting.jp/sl-coat.htm

第5位 屋根クール スプリンクラー設置(屋根)

屋根にスプリンクラーを設置して水の気化熱を利用して折半屋根を冷やして涼を得るという施策です。 地下水利用でないと水道代(上水道)がかかるためにポンプの電気代とともにランニングコストがかかるという理由と夏季のみしかメリットがないことによって5位となりました。 

https://www.yanecool.com/strong/comparison.html

まとめ

5つの方法はどれも有効策であり選択するには様々な角度から吟味する必要があります。 今回は倉庫が賃貸物件だったということから退去時には他でも移設して再利用できる施策が上位となりました。 

<決定条件項目>
施設用途
形状
築年数
高さ
周囲環境
業種
施工目的
性能
価格
ランニングコスト
耐用年数
製品保証
移設の可否
有事の保障

案件ごとに公平なアドバイスをしたいと考えておりますのでお悩みの企業の方はご相談願います。

工場・倉庫の暑さ対策 ベスト5

数多にある工場・倉庫の暑さ対策の中で何を採用するかについて悩まれる方がほとんどだと思います。「作業効率の向上」「熱中症防止」「離職率の低減」 「省エネルギー」と施策による効果はとても多いのですが多額の経費を伴うために失敗が許されず情報収集に努められている企業の方に考え方のヒントを発信します。

弊社の成果報酬型省エネコンサルティング「省エネ革命」は経費の発生する機器の購入の前に徹底した運用改善指導を行い現在の使用状況から無駄な部分を見つけて削減益を見出したうえで効果的な機器の購入に進むのを是としております。 お金をかけてメリットがあるのは当たり前のことなのでまずはお金をかけずにできることを外部からの目で開発しますのでお問合せ下さい。

省エネ革命のコンテンツ紹介動画はこちらです

「省エネ革命は」2019年省エネルギー大賞 大賞候補にノミネートされました。

<折半屋根で高天井の形状の工場・倉庫への対策>

特に工場や倉庫など高天井で空調機器の設置が効果的でではない施設に有効な対策です。

4mを越える高天井の折半屋根は真夏の太陽に照らされて70℃近い温度まで上昇します。 問題となるのは輻射であって遠赤外線が熱せられた天井面の熱を室内に伝えてしまいます。 これを防ぐために。。

多くの関連の展示会を歩いてきた私がレポートします。

対策1:スプリンクラーで水を噴霧して屋根自体を冷やす

<屋根クール>

株式会社カーネル

省エネEXPO2018で拝見しました。

シンプルですが材工込みの価格がリーズナブルに感じました。

また、ここには画像がありませんが空調室外機周辺に設置することで気化熱の冷却効果により熱交換機(アルミフィン)周辺の熱を緩和して空調効率を高める(-10%~-15%)

*こちらの技術として特記するものとして空調機に対しては雨水を溜めて噴霧するというシステムが別売であります。 水道水はカルキが入っているためにアルミフィンに付着して悪さしてしまう可能性が高いのですが雨水ではこれはおこりません。 別売のユニットの価格は不明ですが同じ理由で井水も有効と思いました。

豪雪地帯であれば冬季には融雪のためにも利用が可能となり雪降ろしの作業が軽減される二次的効果もあると思い上位となりました。

対策2:遮熱シートなどを屋根に貼る

<サーモバリア>

省エネEXPO2018で拝見しました

株式会社ライフテック

遮熱塗装や風を通して空冷を促すシートなどは数多く存在します。

この製品の良さは材工コストが2000円/㎡台とリーズナブルなところです。  アルミ製品であること10年以上の長期寿命があることなどでも十分に通用すると感じました。

上図の解説のように熱が伝導<対流<輻射の順番で伝わり方が増加します。

伝導や対流は遮ることで止められますが輻射は熱の高いところから低いところに向かうので容易に止めることは困難となります。

屋根部分をアルミで覆うことにより輻射を寄せ付けず内部への熱の侵入を99% カットすることで室内温度の向上を防止します。

対策3:ミストの噴霧による気化熱冷却

環境展・ENEX2018などで拝見しました。

<クールミストline>

東横サポート有限会社

工場内などにおいて作業環境の健全化を含めて作業効率を高める目的で用いる大作です。 クリーニング工場・リネン工場など常時劣悪な環境における作業を余儀なくされる工場においての導入がおすすめです。

街角でも時折噴霧しているのを体感したことがあると思いますがそれです!!

お値段もリーズナブルでした。(30000円前後/機)

対策4:水冷ファンクーラーの導入

株式会社フナボリ

省エネEXPO2018をはじめ多くの展示会で拝見しております。

倉庫などに有効な対策となります。 定点での作業があり、風に飛ばされないような作業の場合には特に導入が可能となります。

水の蒸発の際に起きる気化熱を利用したファンなので室内温度-5℃と風による体感温度の低下-2℃~-3℃を加算すると-7℃~-8℃の涼を一般の空調機の10分の1のコストで得ることができる優れものです。

真夏の輻射熱で溜まる倉庫内の空気は劣悪な環境を産みます。 前述のように熱は高いところから低いところにそして高所から低所へと伝わりやすいからです。

送風機と排気ファンを設置することで環境改善を行います。

ラインナップも豊富です。

対策5:空調服・冷却ベストの着用

りょうざい屋

炎天下での作業や空調機器の設置が不可能な場合で有効と思われる対策である。

4~5時間の涼を得られるという触れ込みであるが2時間以内に効果がなくなってしまったという意見もあり環境や作業内容により有効時間は短縮するものと思われる。 3800円/セットの本製品は同様の製品と比較してリーズナブルと言える。

前後に装着して着用して同数の変えパックを冷凍庫にて保存して置き効果がなくなった際に交換して長時間の作業時間でも対応できるようにする必要がある。 冷蔵庫完備の場所でないと長時間の冷気の維持が困難になるデメリットがある。

数多くある中でのベストを選択するには吟味が必要かと思います。 弊社は成果報酬型の省エネコンサルティングを行いますのでお客様のメリットの向こう側にのみ弊社の利益が存在するためにメーカーフリーでアドバイスを行います。

この他にも多くのケースに応じた有効対策がありますので発表していきますのでご期待ください。

削減成果報酬型省エネコンサルティング「省エネ革命」のコンテンツ紹介